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あるき みちにおく ことば


by iceman0560
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―ただ、君に触れたかった。
 
 その前に立つといつも君の姿が目に入る。
 ゆっくりと微笑むと、君も同じように返してくれた。
 右手を差し出すと左手を出してくれた。
 ため息をつくと、君も同じ気持ちだった。
 最初は、それだけでよかった。
「君に、会いたい」
 いつからだろう、こんな気持ちになったのは。
 白い壁、低い天井、張られたポスター……。
 こちらと何一つ変わらない。
 君ならきっと誰よりもわかりあえると思っていた。
「でも、これが現実、か……」
 差し出した手はいつも、この数ミリの壁に遮られる。
 君も、悲しいんだね。
 そんな顔をしないでくれよ、僕まで悲しくなる。
 数ミリ越しの額のキス。
 冷たかった。
「そうだ、壁を壊してしまおう」
 名案だと思った。
 僕にはたくさんの時間があるし、それほどこれが難しいことだと思えなかった。
 さっそく、ヤスリを買ってきて、壁を削り始めた。
 始めてみるとこの壁が酷く脆いものだということに気付いた。
 ちょっと力を込めただけで白くにごり、ヒビがはいってしまう。
 だから、慎重に、少しずつ削っていった。
 作業をしてる間は集中していたし、何も考えられなかった。
 だけど、たまに誰かの顔がよぎったり、メロディが浮かぶことがあった。
 そして、疲れて顔を上げると君が不安そうに僕を見つめていた。
「大丈夫、きっと」
 自分に言い聞かせるように言うと、君は微笑んでくれたっけ。
 元気付けられて、幸せな気分になった。
 そんなことをしながら、壁は確実に薄くなっていった。
「もうすぐだよ」
 声は聞こえなかったけど、君は頷いてくれた。
 そして、何日?何十日?何百日?
 もう日常になってしまったこの行為に終わりが訪れた。
コツン
 ヤスリが今までにない感触を伝えてくる。
「やった。これで君に……」
 喜びと達成感、そして君に会えることに感情を抑えられなくて、狂ったように顔を上げた。
「あ……」
 君がいない。
 君がいない。
「なんで……なんで……」
 余計なことだったのか?
 怒らせてしまったのか?
 そんな疑問が浮かんで消える。
「あは……あはは……」
 もう、遅い。
 何をしても君は帰ってこない。
 そう、わかってしまった。
 ±0になった壁を前に僕は崩れ、そして、ふと、窓を見た。
 “そこに君がいた”
「……え?」
 驚いて顔に手を当てる。
 君も手を当てた、酷く醜い顔で。
 それを見て僕は君が/僕が映るものをすべて破壊した。
 結局、僕は縛られて、天井を見ている。
 破片がキラキラと輝くこの部屋で。

―ただ、僕は僕に会ってみたかった。
# by iceman0560 | 2005-07-16 23:36 | 書き物
『なぁ』
「はい?」
『生きてる実感ってあるか?』
「知りたきゃ死ぬ目にあってください」
# by iceman0560 | 2005-07-16 05:22 | 書き物

無題

いつからか歩き出して
今まで歩いてきたこの道

誰かの足跡を追ったり
あえて外れてみたり

そんな風に気ままに
歩いてきた

いつからか足が軽くなって
いつからか足が重くなってた

そして気がつけば座り込んで

暗転
覚醒

そして、気がつけば道があった
# by iceman0560 | 2005-07-14 23:57 | 書き物

無題

見上げた空はこんなにも広くて
見下ろした手はこんなにも小さくて

いつか、つかめる日が来るのだろうか
こんな、小さな僕でも

そんなことを考えて
空ばかり眺めていた

まだ、痛みを知らなかったころのこと
まだ、限界を知らなかったころのこと
# by iceman0560 | 2005-07-14 00:25 | 書き物