あるき みちにおく ことば


by iceman0560
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ありふれた話

『期待にすべて応えてたら、さすがに疲れるだろ?』
 そう言って、あいつは笑った。
 僅かに茶色がかった細い髪とメガネの奥で優しく瞳が揺れていた。
 今となっては何でそんな話になったのかわからない。
 もともとそんな話をする間柄じゃなかったし、なにより、俺がそういうマジメな話を嫌いだったからだ。
 だからきっと、あの時の夕日のせいなのだろう。
 なんだか馬鹿みたいに綺麗なのに、とても、胸を締め付けるほどの夕日の。
「でも、お前のことだし、それでも応えちまうんじゃねえの?」
 俺は知らず、そう答えていた。
 実際、あいつは何でもこなしていたし、頼りにもされていたからだ。
 俺はそんな友人であるこいつが誇らしかったし、俺も頼りにしていた。
「さて、どうなんだろうね?」
 とぼけるようにあいつは言った。
 太陽の影になって表情は読めない。
「どうなんだろうね・・・って、だったらやめちまえばいいじゃねえか」
 そういった俺にあいつは吹き出してたっけ。
「僕も君みたいだったらよかったのにね」
 笑いながらそいつは言っていた。
 相変わらず、表情は読めなかったけれど。
 
そこから先のことはあまり覚えていないのだけれど、多分大したことはなかったように思う。
きっと、何事もなかったように帰ったのだろう。
だが、次の日、あいつは来なかった。
残ったのは、紙切れが二枚、白い箱、それだけ。
あんなに頼りにしてた連中も、先生も、半年もすれば何事もなかったようになっていた。
そして手元に紙の1枚が置いてある。
『僕は君になりたかった』
 きっと、それを見るたびに俺はこう思うのだろう。
・・・ばっかじゃねぇの
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by iceman0560 | 2005-09-28 00:07 | 書き物